口腔ケアとは

口腔ケアとは

画像 画像 近頃、口腔ケアという言葉がよく使われるようになりました。でも、実際どんなものか、どのような効果があるのかをよく理解していただいているとは思えません。 せまい意味でとらえると、お口を清掃するだけでも口腔ケアといえます。
ブラッシングによって口内の細菌数を減らすと肺炎を予防になり、ブラッシングそのものが口腔諸器官への感覚刺激、機能訓練となるからです。

でもブラッシングだけでは本質的な問題解決にならないことはおわかりいただけるでしょう。なぜなら、要介護高齢者のお口は、加齢的変化や廃用症候群、摂食嚥下障害、薬物の影響など、健常者とは異なるいろんな条件が複雑に絡み合っているからです。このような条件に対しては介護予防から歯口清掃や歯科治療そして摂食嚥下リハビリテーションまで同時進行的にアプローチをすることが必要です。これらアプローチをすべて含めて口腔ケアなのだと考えています。

目的と効果

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口腔ケアの目的

気道感染、特に誤嚥性肺炎の予防 と口腔疾患の予防 、そして食べることの支援を中心としたQOLの向上をはかることを目的としています 。

口腔ケアの効果

その具体的効果としては以下のようなものがあげられています。
1.口腔疾患の予防、抑制
2・口臭の消失
3.唾液分泌の促進 ⇒ 自浄作用の向上
4.味覚の回復
5.誤嚥性肺炎・気道感染の予防
6.食事時間の短縮
7.食欲の増進
8.体力・気力の増進
9.食材・調理方法の範囲が広がる
10.楽しく話せる表情豊かになる
11.その他、全身への波及効果

留意点

口腔ケアの前に留意すること

口腔ケアを行う場合いきなりケアを行うのではなく、以下のような内容について細心の注意を払ってリスクを軽減し、安心安全なケアを行うことが求められます。

Ⅰ(全身状態)
1. コミュニケーション能力
2. 認知症の有無と中核・周辺症状の発現状態
3. 姿勢 ……………… 座位自立・座位介助・側臥位・仰臥位
4. 全身の運動性(移動など日常生活動作の自立性)
5. 嚥下障害の有無と状態
6. 意識障害の有無と状態
7. うがい能力
8. 食事摂取の方法と食形態
9. 出血傾向の有無
10. 感染症の有無

Ⅱ(口腔)
1. 口腔内の観察(口の中に痛みなどの問題があれば拒否につながることも)
2. むし歯や歯周病のチェック(口臭、痛み、腫れ、出血、歯の動揺 etc.)
3. 義歯の状態チェック(有無、適合、破損、汚れ、粘膜の傷 etc.)
4. お口の清掃状態チェック(口臭、舌苔、乾燥、食物残渣 etc.)
5. 食事のチェック(食事時間、食事量、ムセ、嗜好の変化 etc.)

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義歯の破損
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義歯の汚れ

うがい・ブラッシング

うがいが基本

うがいができるとその後のブラッシングや清拭が効果的に行えます。また、うがいは、口唇、頬、舌、顎など口腔周囲筋を協調的に使うことになり、”食べる”機能の維持、強化にも有効です。

ブラッシングの基本(歯ブラシ)

口腔清掃の基本は、口腔内のプラーク(歯垢)や食物残渣を取り除くことです。残存歯があれば歯ブラシを使うことが基本となります。まず、義歯があれば外し、残渣物が多量にある場合はまずうがいで吐き出すかスポンジブラシなどでかき出します。
ブラッシング方法は、毛先を歯面や歯と歯ぐきの間にきっちり当て、1本1本磨くように細かく横に動かします。柔らかめの歯ブラシで軽いタッチでブラッシン グします。大きく動かしたり強い力を入れると、汚れが取れないばかりか歯ぐきを傷つけたり歯をすり減らしたりします。介助磨きの場合には拒否につながるこ ともあります。
また、汚れが残りやすいところは、歯の噛み合わせの溝の部分、歯と歯ぐきの境目、歯と歯の間などです。義歯を装着している場合は、バネのかかってる歯です。特に注意してブラッシングするようにします。

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1. 磨こうとする歯に毛先をきちんとあてる

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2. 軽い力で磨く

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3. 小刻みに歯ブラシを動かす(1本1本磨くように動かす)
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4. 汚れが残りやすいところ

口腔清掃

口腔清拭

1.清拭グッズ

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ガーゼ・綿棒
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スポンジブラシ
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エステグローブ
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ガーゼ

2.清掃部位と方法

画像・スポンジブラシは水(お茶やレモン水でも可)に漬け、指でしぼってから使う。
・ 一動作ごとにブラシは水洗いする。
・ 口腔内の全部位を、それぞれ奥から手前に汚れをかき出すように動かす。
・ 歯ブラシよりはやや圧をかける(圧が弱いと逆に不快に感じる)
・ 動作を大きくゆっくりと相手の呼吸に合わせるように動かす。
★一動作ごとに反応(口腔の動き)を確かめながら!

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高齢者の口腔

高齢者の口腔

1. 口腔内自浄作用の低下
高齢者の唾液分泌量は減少します。内服薬剤の副作用や、硬いものを噛まない(咀嚼回数少なかったり、噛む力が弱い)ことで唾液分泌が抑えられてしまいます。また、食形態で刻み食やペースト食では、顎も舌も活発には動かず自浄能力の低下をきたします。

2. 加齢や、疾患により歯の喪失や、口唇や頬や舌など口腔周囲の筋力低下、神経麻痺などで、咀嚼・嚥下(飲み込み)に支障が出ていることがある。麻痺側の食残渣の停留で一側性のう蝕多発や舌の機能低下により舌苔やカンジダ汚染などが起こります。

3. 身体の障害や認知症などで口腔清掃の習慣が奪われケア放置の状態になると歯の根っこだけが残り、咬合崩壊(噛むことに支障)がでてきます。口腔内は著しく不潔になり、口臭の原因になったり、味覚が損なわれたりします。また、疾患や歯ブラシの習慣がなくなることで口腔過敏になりケアの拒否につながることがあります。

義歯の管理・洗浄

義歯の管理・洗浄

1. 総義歯(総入れ歯)と部分床義歯(部分入れ歯)があります。

2. 総義歯の着脱は比較的容易ですが、まれに上の義歯で外しにくい場合は床と粘膜の間に空気を入れるように頬や口唇を大きく動かしたりします。部分床義歯には残っている歯にかけるバネが付いています。歯に負担をかけないように外します。バネ部分に爪をかけ、上の義歯は下方向に、下の義歯は上方向にまっすぐ外します。部分床義歯の装着はバネのかかる歯の位置を合わせ、義歯の人工歯の部分を押します。
噛み合わせの人工はと天然歯の高さできちんと装着ができているか確認します。

3. 食後、歯ブラシ(かための歯ブラシ)や義歯専用のブラシを使って内側と外側のヌルヌルがなくなるまで汚れをとります。(できれば毎食
後)流水下で洗う(落とすと割れやすいので、水を張った洗面器などの上で)。部分入れ歯はバネの部分に汚れが残りやすいので注意して清掃します

4. 歯磨き粉は義歯の樹脂部分が磨耗しますので使用しません。

5. 個別容器に水を少量入れて(水は毎回新しいものを)保管します。最近の義歯の素材は水中保管の必要はありませんが、義歯を乱暴に扱わない(破損しないように)ために水中保管は良い方法です。

6. 粘膜の休養のため、夜間ははずしておく方が望ましい。ただし、不随意運動などで粘膜に咬傷ができる場合などははずせないこともある。保管する前には義歯を洗ってから(食べ物がついたまま入れない)清潔な状態で保管します。装着時には流水で洗い流していれます。

7. 堅いものの上に落としたり、熱湯をかけたり、火に近づけないようにしましょう。割れたり、変形したりします

8. 義歯の主な部分は樹脂でできています。水分や細菌、汚れを吸収しやすく、カビの一種であるカンジダ菌の繁殖の場となります。不潔な義歯を使用し続けると義歯性口内炎や口臭の原因となります。日常の清掃は、歯ブラシが基本ですが、義歯を長期にわたり清潔に保つためには細菌や汚れの原因を化学的に除去するためには義歯洗浄剤が必要になる場合もあります。※ 現在市販されている義歯洗浄剤はたくさん出ていますが、およそ次の3種類に大別できます。
過酸化水素系
過酸化水素などの酸化力と、成分中の発泡剤の泡による機械的な作用を利用するものが多く、義歯の汚れは除去されますが、カンジダ菌を除去する作用は弱いと言われています
次亜塩素酸系
有機物を溶かして細菌などを殺す強い作用がありますが、義歯の樹脂や金属の変色をおこすことがあるので、長期間の使用は勧められません。
酵素系
蛋白分解酵素によりデンチャープラーク中の細菌や微生物を除去します。※ 義歯の汚れの状態によってこれらを使い分ける必要があります。

使用方法は各商品の説明書のとおり扱いますが、いずれの場合も、まず流水でざっと汚れを落とし、一定時間洗浄液につけ、その後ブラシで洗う。また、完全な消毒はできないので個別容器を用います。

口腔清掃グッズ

清掃グッズ 紹介

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歯間ブラシ
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舌ブラシ
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クルリーナブラシ
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義歯ブラシ

工夫された歯ブラシ等 参考例

手指の機能低下の状況に合わせ、自立したブラッシングが出来るように工夫した歯ブラシ

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吸引付歯ブラシ
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吸引付クルリーナ
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口腔保湿剤
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